小児てんかんの種類と症状
小児てんかんは、新生児から思春期までにおこるてんかんの総称で、発症する年齢、それぞれの原因や症状などにより異なる症候群名がついています。成人になるまでに治ることもありますが、その後も残る場合があります。
発症原因はさまざまですが、原因不明の「特発性てんかん」と脳の障害に原因がある「症候性てんかん」に大別されます。乳幼児期には原因不明でも、成長によって判明する脳の先天的な奇形や、新生児仮死などの周産期障害によることもあります。
小児てんかんの種類と特徴PDF(113KB)

合併することのある併存症
小児てんかんでは、①発達障害、②心身障害(手足の不自由さや知的障害など)、③認知機能障害を伴うことがあります(てんかんについて―合併することのある併存症)。小児期は脳の成長・発達にとても大切な時期です。成長を妨げることがないように、発作を抑えることが大切になります。
小児てんかんの診断
小児の場合、てんかん以外にさまざまな発作があり、てんかんとの判別が大切です。
主に次のようなものがあります。
小児てんかんと間違えやすい発作
良性の発作 | けいれんの症状 |
---|---|
熱性けいれん | 38度以上の熱がある場合におこるけいれん 発熱時にしかおこらない |
慣怒けいれん | 怒りや痛みなどで激しく泣き、急に息をとめてチアノーゼになり意識を失う場合と、 逆に泣くこともなく急に意識を失い、ぐにゃりと脱力する場合がある |
入眠時ミオクローヌス 睡眠時ミオクローヌス |
眠りばなや睡眠中におこる短い小さなびくつき |
夜驚症 | 睡眠中に突然おこる強い恐怖で悲鳴をあげたり、興奮状態などが1~10分続く |
夢遊病 | 睡眠中に突然立ち上がる、歩き回る、走り回るなどが1〜40分続く |
チック | 眼瞼、顔、顎、肩などが突発的に急激な運動を繰り返す |
神経調節性失神 | 急に意識を失い崩れ、脱力する状態。立っていておこる場合や 恐怖や痛みが原因で反射的におこる場合などがある |
心因性発作 | 症状はさまざま。持続時間が長いこともある |
急性代謝障害 | 低血糖や高アンモニア血症で意識消失や全身のけいれんなどがおこる |
小児てんかんの治療・ケア
小児てんかんでも、大人のてんかんと同様に発作の種類によって薬が選択されます。子どもの場合、成長に伴う体重の増加に従って、薬の量も変更する必要があります。
小児てんかんと成長
てんかん発作がおきないように、そして、もしおきた時のために、子どもの安全を守るうえで生活に制限を設けることは大切なことです。ただし、兄弟や学校の同学年の子どもたちと異なる環境に置くことが、必ずしも良い環境とはいえないかもしれません。この時期は人格形成に影響しやすい成長期であることから、現在の病気の様子や心の状態などをふまえて、通学などの生活全般について主治医と相談しましょう。
生活上の注意
小児てんかんと診断されたら、発作がおきないように日常生活で注意することがあります。特に次のようなことに注意しましょう。
睡眠不足
睡眠不足は発作を誘発すると言われています。少なくとも7時間以上の睡眠を目安にしましょう。
テレビゲーム・テレビ
光感受性のある方では、てんかん発作がおこる場合があります。テレビを見るときはできるだけ離れて明るい部屋で見るようにしましょう。
パソコン
規則的な生活を送るために、ゲームを長時間続けないようにしましょう。
入浴
入浴時に発作がおこった場合、溺水などの重大な事故がおこるリスクがあります。てんかんをもつ子どもで、溺水の原因の約70%が入浴時と報告されています。対策として、小学校低学年~中学年までは家族と一緒に入浴する、もしくは、家族がそばを離れるときは子どもが大きな声で数を数えるなどの工夫をして、常に様子が確認できる状態にすることを心がけましょう。
運動
通常、てんかん発作が運動中におこることは稀です。運動の良い側面も指摘されており、てんかんの子どもにとって適度な運動は必要です1)。ただし、水中でてんかん発作がおきると、泳げても、水深が浅くても溺れる危険性があり、水泳には注意と制限が必要です。運動の種類や程度について主治医と相談のうえで適切な運動を生活に取り入れましょう。
1) Epilepsia. 57:6-12, 2016. Capovilla G, et al.: Epilepsy, seizures, physical exercise, and sports: A report from the ILAE Task Force on Sports and Epilepsy.