診断と治療

てんかんの診断に用いられる検査

問診

てんかんの診断でもっとも重要なのは発作に関する情報です。医師は、発作時の状況を詳しく時間をかけて聞きます。患者さん本人は発作中に意識を失っている場合が多いため、その場に居合わせた人からの情報が大変重要となります。また、発作時の状況を録画することも有力な情報となりますので、記録した媒体があれば持っていくと診断に役立ちます。
 さらに、脳の外傷やその他の病歴、過去の熱性けいれんの有無などが聞かれます。過去に発作の経験がある場合は、いつ、どのような発作だったか、抗てんかん薬は服用していたのか、その種類などが確認されます。発作時のご自分の状態と意識がないときの様子(これは見ていた人からできるだけ詳しく聞いておきます)を医師に伝えましょう。

てんかんの年齢別発症率

脳波検査

てんかん発作は、脳の神経細胞が過剰に興奮することによりおこるため、脳波検査が必須です。発作時には正常とは異なる大きな電流が流れますが、発作でないときにも特徴的なさまざまな脳波異常が検知できます。棘のようにとがった棘波や、棘波よりはやや幅の広い鋭波などがあらわれます。このような脳波を「てんかん波」とよびます。患者さんの1回の脳波検査でてんかん波が記録されるのは約半数とされています。検査回数を多くするほど、てんかん波が記録される確率がより高くなります。一般に、てんかん波は覚醒状態と比べて睡眠時、特に入眠時・軽睡眠時に増加します。そのため、てんかんの可能性がある患者さんでは覚醒時と睡眠時の両方の脳波記録が必要です。

てんかんの年齢別発症率

長時間ビデオ脳波検査

通常の短い脳波検査では、てんかん発作時の異常脳波を記録することはなかなか難しいため、長時間にわたりビデオ撮影と脳波測定を行い、異常を調べます。この検査では、実際の発作症状と発作時の脳波所見を観察できるばかりでなく、脳のどこから電気刺激がおこり、広がっていくかを詳しく知ることができます。そのため、てんかん手術前の正確な診断を目的として実施されます。また、有効な治療に結びつけるために、てんかん発作かどうか、あるいは発作の種類を鑑別する目的でも利用されています。

検査は寝たままの状態ではなく、検査中でも部屋の中では多少動くことができます。この検査はてんかんの専門病院で行っています。

画像検査

てんかんの原因を調べるために脳の画像検査が用いられます。

CT検査

数分で終了するため、救急の場合には有用です。けいれんや残存する意識障害の原因を速やかに明らかにする必要があるときに使われます。多少の被曝が心配されますが、検査によって得られる情報の利点の方が大きいとされています。脳の石灰化、出血、 腫瘍の有無などがわかります。しかし中枢神経疾患に伴う小さな病変の描出能力はMRIの方が優れています。

MRI検査

脳の出血、腫瘍、石灰化、皮質のつくりの異常がわかります。小さな病変の描出能力では中枢神経疾患の画像診断ツールのなかでもっとも優れています。CTに比べてじっとしている時間が長く必要なことから、患者さんの協力が得られる状況に限られますが、原因の検索には必須の検査です。検査時間内に静止していることが難しい場合は、眠る薬を服用してもらい眠った状態で検査を施行します。

PET検査

脳の活動に必要なブドウ糖の代謝を調べることができます。てんかん発作の原因となる脳の部位では、普通のときはブドウ糖の代謝が低下し、発作時には上昇します。MRIは脳の「形」や「つくり」をみますが、PETは脳の「機能」をみることからてんかんの外科手術の際や、より詳しく様子を調べるときにMRIと組み合わせて用いられます。

SPECT

脳の血流を調べることができます。てんかん発作の原因となる脳の部位では、普通のときには血流が下がり、発作時には血流が上がっています。この変化をとらえることで、脳のどの部分で発作がおこり、脳のどの範囲まで広がるか特定することができます。てんかんの外科手術の際や、より詳しく様子を調べるときにMRI、PETに加えて用いられます。

その他

血液検査

薬の濃度、副作用の有無、発作後の血液成分の変化[CPK(クレアチンホスホキナーゼ)など]をみるために定期的に行います。

脳磁図検査

脳から発生する磁波を測定します。脳磁図検査では脳波と同様に脳活動を観察できます。多くの施設では、脳磁図を測定するときには同時に脳波も測定しててんかん波を確認しながら解析を行います。脳波が一般的で繰り返し行える検査であるのに対して、脳磁図は手術適応を検討中の場合や脳波で診断が困難な場合に限って実施されます。

てんかんの治療

けいれん発作が初めておこった場合、その25~30%は脳損傷や炎症などの誘因のある発作で、再発率は10%以下といわれています。この場合は、まず誘因を治療します。

一方、誘因のない最初の発作では再発率は30~50%といわれています。この場合は、定義にのっとり再発のリスクが高い場合にのみてんかんの治療を開始します。治療開始は慎重に判断されます。

治療は、日常的に抗てんかん薬を服用して発作を抑えることを目的として行います。適切な治療を行うことでおよそ70%の患者さんの発作が抑えられ、日常生活を送ることができます。

抗てんかん薬は、発作の種類により選ばれます。最初は1種類の薬で治療を行いますが、症状により2種類以上の薬と組み合わせることもあります。

抗てんかん薬が効きにくい状態や、薬で発作のコントロールが難しい場合には、手術治療、迷走神経刺激療法(VNS)注)などの外科療法について検討していきます。

注) VNSは体内埋め込み式の刺激装置です。慢性的に左頸部迷走神経を刺激して、てんかん発作を減少、軽症化させます。埋め込み手術は全身麻酔で行い、2時間程度の手術ですが、手術後入院が必要です。保険が適用されます。

抗てんかん薬とその作用

てんかん発作は、脳の神経細胞(ニューロン)が、突然過剰に興奮するためにおこります(てんかんとは)。
 これらの作用を主に調節する神経伝達物質として、GABA(放出されると興奮を抑える)、グルタミン酸(放出されると興奮する)があります。

抗てんかん薬は、①興奮系の活動を抑えることで神経細胞の興奮を抑える薬(興奮系のイオンやグルタミン酸系の神経に作用するもの)と、②抑制系の活動を強めることで興奮を抑える薬に大きく分けられます。

抗てんかん薬とその作用
抗てんかん薬の作用

発作の種類ごとに異なる抗てんかん薬

発作の種類により用いる抗てんかん薬の種類が異なります。さらに、1種類の薬だけではなく、他の薬と組み合わせて使われることがあります。症状の説明とともに薬の効果や特徴についても主治医から説明を受けましょう。

特定のてんかんに認められている抗てんかん薬

特定のてんかんとは、ドラベ症候群(乳児重症ミオクロニーてんかん)、レノックス・ガストー症候群、点頭てんかん(ウエスト症候群)などです。治療が難しいこれらの小児てんかんに対して用いられる治療薬があります。

抗てんかん薬を飲むときの注意点

絶対に他のてんかん患者さんの薬を飲まない

他の治療でも言えることですが、特にてんかんの薬は発作の種類によって処方が異なります。年齢や体重、他の病気や身体の状態によってもっとも有効な薬の用量が決められ、それは人によって異なります。そのため、他の患者さんの抗てんかん薬を飲むことは、ときに危険を伴います。

他の薬との飲み合わせに注意

抗てんかん薬以外の薬を飲んでいる場合、薬が互いに作用しあうことで、薬の効果が強くなったり弱くなったりすることがあります。そのため、他の薬を飲んでいる場合は、薬剤師や主治医に必ず相談しましょう。他の病気などの治療薬が追加される場合は、必ず、自分が抗てんかん薬による治療を受けていること、治療薬の種類や服用している量を伝えましょう。このとき、お薬手帳に正確に記載されていると役立ちます。

抗てんかん薬の主な副作用

抗てんかん薬は、脳が異常な働きをおこさないようにする作用を持つため、普通に行われている脳の働きも抑えてしまう作用が出ることがあります。そのため、眠気やふらつき、抑うつなどの精神症状がみられる場合があります。また、飲み始めて数週間後にアレルギー反応として発疹などがみられることもあります。初めての薬を服用する際には、こうした作用に注意しつつ、少しずつ薬の量を増やしたり、減らしたりします。気になることがあれば主治医や薬剤師に相談しましょう。

長い期間服用していると、まれに肝機能低下や腎機能低下、貧血や白血球減少などの副作用が出ることがあります。定期的な血液検査が必要です。体調など何か変わったことがあれば主治医に伝えましょう。

妊娠可能な年齢の女性で妊娠を望む場合は、抗てんかん薬が児の奇形や発達に影響する可能性があるため、主治医に相談しましょう。

治療の難しいてんかんの場合は、特に効果と副作用を考えて治療薬を慎重に決めていきます。主治医や薬剤師に話をよくきいて、何か変わったことがあれば相談できるよう、日々の様子を記録することは重要です(症状記録表ダウンロード)。

薬とのつきあい方

てんかん発作を予防するには、薬の飲み忘れを防ぐことがもっとも重要です。主治医から処方された薬は自分で勝手にやめてしまったり飲むタイミングを変えたりしないようにしましょう。もし飲み方で困ったことや副作用などが心配な場合は、主治医や薬剤師に遠慮なく相談して、ご自分が納得して服用できるようにしましょう。

薬とのつきあい方

監修:渡辺 雅子 先生(新宿神経クリニック院長)

更新日:2018年10月01日

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