Q&A暮らしサポート てんかん発作とともに生きるために

一般的な疑問

てんかんとは、どのような病気ですか?

てんかんとは、てんかん発作を繰り返す慢性の脳の病気の総称であって、ひととおりではありません。
てんかんとは、てんかん発作を繰り返す慢性の脳の病気の総称であって、ひととおりではありません。

ですから、一般的にてんかんといった場合は、けいれんをおこしやすい体質、脳血管障害などの後遺症、胎内で生じた脳の奇形、などの様々な異常が原因となって生じます。そのため原因とてんかんのタイプによって治療の方法や合併障害、そして完治する頻度も大きく異なります。てんかんと診断された場合には、自分はどのタイプか主治医によく聞いて、どのように対処すべきか考えましょう。

てんかん発作は皆さん同じ症状ですか?

てんかん発作は、突然おこり、短時間で突然消失することがほとんどです。
てんかん発作は、突然おこり、短時間で突然消失することがほとんどです。

通常は数十秒から数分以内で消失します。また、重要なことは、1人の人の場合、ほぼ同じ発作症状で繰り返すことです。しかし、このてんかん発作には人によって様々な型があります。テレビドラマや小説などで最もよくみられる発作は全身のけいれん発作で、かつて「大発作」と呼ばれていたものです。その他にも10秒程度ぼーっとした状態のみで終始するものもあります(欠神発作)。また、脳の一部分のみが異常興奮する場合には体の一部分のみに運動、感覚異常がみられます(部分発作)。

てんかん発作は、てんかんの診断、治療方針を立てるうえで重要な手がかりとなることから、発作の症状をよく観察して主治医に説明することは重要です。その場合、発作の症状についての情報(メモや外から見た症状を動画で記録)、患者さん本人が感じた症状(発作を覚えている場合)の両者があると治療方針を決める際に参考となります。

テレビゲームやアニメはてんかん発作を引きおこすのですか?

1997年にアニメ「ポケットモンスター」視聴中におきた光感受性発作が大きな話題になりました。
1997年にアニメ「ポケットモンスター」視聴中におきた光感受性発作が大きな話題になりました。

これは、放送中の複数個所でみられた赤色と青色の激しい点滅により、「光感受性発作」をおこして気分を悪くした視聴者が続出し、全国で700人以上が搬送されたといういわゆるポケモンショックです。これを受けて、テレビ業界では原因を究明し映像表現を自主規制する取り組みがなされました。日本放送協会(NHK)と日本民間放送連盟(民放連)は共同で1998年4月8日、「アニメーション等の映像手法に関するガイドライン」を発表し、光の点滅、コントラストの強い画面の反転、パターン模様(渦巻き・縞など)の使用、の3つを制限するよう促しています。「部屋を明るくして離れて見てください」といったテロップが表示されるようになったのもポケモンショック後です。

このようにテレビゲームやアニメをみている最中にけいれん発作をおこしやすい患者さんがいますが、その方は点滅する光に対して過敏性素質(光過敏性)がありますので脳波検査でチェックすることが可能です。この光過敏性は通常、成人するとみられなくなるといわれています。

光過敏性のない患者さんではテレビゲームやアニメの視聴に神経質になることはありませんが、睡眠不足や疲れは発作を悪化させることがありますのでテレビやゲームはほどほどにしましょう。たとえ光過敏性が存在してもテレビは注意(部屋を明るくする、テレビ画面より3m以上離れる、短時間にする)して視聴すれば禁止する必要はありません。また抗てんかん薬により光過敏性自体も抑制可能です。

日常生活でのサポート

てんかん発作がおきたときのために注意したいことや整えておくことは?

発作で突然倒れたときにけがをしないように環境を整えましょう。
発作で突然倒れたときにけがをしないように環境を整えましょう。

患者さんが生活する場所で気をつけておくことは主に次のようなことです。

屋内

二段ベッドの上段の使用は避けましょう。また、身の回りに角の尖ったものを置かないように心がけましょう。特にトイレや浴室などの狭い場所では注意しましょう。台所でのガスコンロなどの使用も避けましょう。

発作で転倒したときの大けがを防ぐため、芝や砂などクッション性の高い地面が好ましいでしょう。コンクリートの地面がむき出しにならないようにしましょう。

玄関

マットを広く敷くなど工夫して堅い地面が見えないようにしましょう。

冷暖房

低温や高温に長時間さらされないように温度を調節しましょう。炎や電熱線が見えるストーブ類の使用はできるかぎり避けましょう。

発作の観察に必要なことは何ですか?

「発作時の対処法」のページを参照してください。
発作時の対処法」のページを参照してください。
  1. 落ち着いて、冷静になりましょう。
  2. メガネをはずし、周囲の危険物を取り除きましょう
    (石油ストーブなどは消しましょう)。
  3. 発作の持続時間を計りましょう。
  4. 倒れている場合、けいれんが終わったらタオルや薄いカバンなど柔らかいものを頭の下に敷き体を横向きにしましょう。
  5. 口に絶対に何も入れないでください。押さえつけたりしないでください。
  6. この5項目は英語では頭文字をとって「BRAIN(脳)」として覚えやすくなっています。

  7. すぐに救急車を呼ぶ必要はありません。
    けがをしたときや、5分以上たってもけいれんがおさまらないときは呼びましょう。

Seizure First Aid

Be calm.

Remove dangerous objects.

Always time the seizure.

If person has fallen, turn on side and put something soft under head

Never put anything in mouth and never hold the person

Seek Medical Attention

  • For a first-time seizure
  • Seizure lasts longer than 5min. or repeats
  • Person is injured, pregnant or has diabetes
  • Seizure occurs in water
  • Person does not resume consciousness or normal breathing
  • Person has no ID stating they have epilepsy

出典:http://purpleday-jp.net英語版てんかん発作の初期対応

【英語版てんかん発作の初期対応】

医師の処置が必要なのはどんなときですか。

・けいれんのあるなしにかかわらず、意識が遠のく発作を短い間隔で繰り返すとき・発作と発作の間に意識が回復しない状態で次々に発作を繰り返すとき・1回の発作が5分以上続き、止まらないとき
・けいれんのあるなしにかかわらず、意識が遠のく発作を短い間隔で繰り返すとき
・発作と発作の間に意識が回復しない状態で次々に発作を繰り返すとき
・1回の発作が5分以上続き、止まらないとき

これらは重積状態といわれ、直ちに病院へ搬送し医師の処置が必要です。

てんかん発作の観察と記録のポイントは何ですか?

てんかんの診断にとって、発作の症状はとても重要です。
てんかんの診断にとって、発作の症状はとても重要です。

てんかんの診断と治療方針を決めるためには、発作の観察と記録が貴重になります。しかし、患者さんは自分の発作の症状を自分で知ることが難しいため、介助する人や発作を見ていた人の記録に頼ることが多く、なかでも動画は大きな情報となります。動画を記録したら、主治医にぜひ見てもらいましょう。

身近な人に病気のことをうち明けることで、発作時に、その人が発作の様子を教えてくれて、診断や治療に役立つこともあります。病気のことを打ち明ける場合は、以下のことも併せて知らせると、その後の治療に役立つかもしれません。

【てんかん発作観察の要点】

  1. 発作がおきた時刻と状況、きっかけになることがあったかどうか。
  2. 意識障害の有無
    ・発作中に話しかけたことに正しく答えられるか、あとに、そのことを正しく思い出せるか、で判断できます。
  3. けいれんがあった場合
    ・本人から見て、右か左かどちらを向いていたか、左右の手足はつっぱっていたか、ガクガクしていたか、など。
  4. けいれんがない場合
    ・いつ、誰が、なぜ、異変に気づいたか。表情が変わった、顔色が変わったことなどでわかることがあります。
  5. 発作の持続時間
    ・~秒、~分といった細かいことが無理なら、およそ~秒くらい(分くらい)でも結構です。
  6. 身体の変化
    ・顔色や唇の色、唾液がでていたかどうか。
  7. 発作後の様子
    ・眠ったか、手足に麻痺があったか、ぼんやりして歩き回ったか、失禁はあったか、頭痛や吐き気はないか、など。
  8. けがの有無
    ・有の場合、けがの程度。

発作に気づいた人の手助けと観察は早期発見、早期治療などてんかんのある人の治療と生活にとって大きな意味をもっています。

出典:日本てんかん協会

http://www.jea-net.jp/tenkan/hossa.html#hossa_joukyuu日本てんかん協会

日頃の日常生活で気をつけることは何ですか?

日頃気をつけることの一例です。患者さんによって症状の違いもあるため主治医にも確認してみましょう。
日頃気をつけることの一例です。患者さんによって症状の違いもあるため
主治医にも確認してみましょう。

在宅介助のポイント」も参照ください。

睡眠

薬を忘れずに飲み、早寝早起きをすることで生活リズムが整い、脳の働きも安定します。適正な睡眠時間は個人によって異なりますが、小学生では9時間、中学生では8時間、高校生では7時間以上を目安に十分睡眠をとりましょう。睡眠をしっかりとることで、脳を休め、疲れをためないようにしましょう。

運動

発作時に命の危険があるので海水浴やダイビングは避けた方がよい運動です。一方で、運動による適度な緊張が、けいれん発作を抑制する可能性が指摘されています。運動は健康によいだけでなく心理社会的にもよい効果が期待できるとされています1)。症状について主治医と相談のうえで、適度な運動を日常生活に取り入れてみましょう。

1) Epilepsia. 57:6-12, 2016. Capovilla G, et al.: Epilepsy, seizures, physical exercise, and sports: A report from the ILAE
  Task Force on Sports and Epilepsy.

テレビ

特に小児では光感受性によって発作がおこる場合があります。テレビを見るときはできるだけ離れて明るい部屋で見るようにしましょう。

ゲーム・パソコン

テレビと同様に、光を放つような映像の入ったプログラムには注意しましょう。また、規則的な生活を送るためにも、携帯電話、ゲーム、パソコンを長時間続けないようにしましょう。

入浴

入浴時に発作がおこると、溺水のリスクがあります。てんかんをもつ子どもの溺水の約70%が入浴時といわれています。小学校低学年~中学年までは、ご家族と一緒に入浴することとし、家族がそばを離れるときは子どもが大きな声で数を数えるなど、常に入浴中の様子が確認できるように工夫しましょう。

旅行・レジャー

てんかんをもっていても楽しく活動することで、運動能力を向上させることができ、充実した日々を送ることができます。過度な疲労と睡眠不足を避けるため、十分に余裕をもった旅行計画を立てましょう。抗てんかん薬は普段使用しているものを多めに携帯しましょう。海外旅行の場合は、薬の内容とその必要性についての書類を英文で作成しておくと、出入国時に問われたときに役立ちます。心配ごとがあれば主治医と十分に相談したうえで、楽しく旅行に出かけましょう。

子どものてんかんをケアしている家族です。介助者へのアドバイスをください。

てんかん発作が薬で抑えられていれば、子どもたちは日常生活に特に制限はありません。
てんかん発作が薬で抑えられていれば、
子どもたちは日常生活に特に制限はありません。

内服状況や発作の時刻と回数、睡眠時間などを毎日記録する習慣をもち、症状と日常生活との関係などを診察時に確認できるようにしましょう。医師、薬剤師、看護師と良好なコミュニケーションを維持し社会的な支援も受けながらともに成長を見守りましょう。

乳幼児期のサポート

乳幼児期のてんかんは、薬物に抵抗性を示すことが多く治療に難渋することもあり、発達障害や運動麻痺などを合併する場合があります。

子どもは障害があったとしても、日々成長し続けています。すぐには難しいかもしれませんが、障害を受け入れ、子どもの能力や個性を発揮できるようサポートし、見守っていくことが大切です。

頻繁に発作がおこると、どうしても不安で心労が溜まります。子どもはご両親のそんな変化にとても敏感です。特に母親は子どもと過ごす時間が長いため、笑顔で子どもと過ごせるようにしましょう。それには、子どもの父親や祖父母のサポートを積極的に受け、少しでも自分の時間を作ってリフレッシュすることも必要です。

乳幼児期は、体内リズムを作り上げるとても大切な時期です。早寝早起きを心がけましょう。寝ているときと起きているときのリズムを調整するためにも、日中は明るい光を浴びて活動させましょう。特に子どもは楽しい刺激には良い反応を示します。夜に心地よい眠りにつけるように生活習慣を整えましょう。

学童期のサポート

学童期は自我の確立に向けたとても敏感な時期です。発作が抑えられていれば、日常活動にほとんど制限はありません。積極的に学校生活や行事に参加するようにしましょう。一方で、てんかんのある児童は、発達障害や知的障害を合併していることもあります。集団生活になじめない、自分勝手な行動が多いなど学校生活で心配な行動がある場合、学校行事への参加に制限があるために友だちとの関係が悪化した場合など、学校生活に支障をきたしそうなときは、早めに学校や主治医に相談しましょう。

さらに、高学年になっても服薬が必要な場合は「なぜ薬を飲むことが必要か」を説明して、少しずつ自己管理ができるようにしていきます。

また、クラスメイトにはてんかんを理解してもらうことが大切です。学校、担任などとよく話をしてサポートしてもらえるよう理解と支援をお願いしましょう。

妊娠・出産はできますか。

妊娠中に抗てんかん薬を服用していると、胎児に影響を及ぼす可能性があります。
妊娠を望むときは、その旨を主治医に伝えて今後の治療について相談しましょう。
妊娠中に抗てんかん薬を服用していると、胎児に影響を及ぼす可能性があります。
妊娠を望むときは、その旨を主治医に伝えて今後の治療について相談しましょう。

妊娠そのものがてんかんを悪化させる可能性は低いとされていますが、抗てんかん薬のなかには妊娠中に血中濃度が減少するものもあるため、発作が再発する可能性があります。また、妊娠中にてんかん発作があると、胎児に送りこむ酸素の量が減り、胎児仮死や切迫流産、切迫早産の危険性が指摘されています。

妊娠中に抗てんかん薬を服用すると、奇形や低体重児出生のリスク増加、子どもの知的機能(たとえばIQ)への影響も懸念されています。また、授乳期にてんかんの薬を飲んでいると、薬剤が母乳へ移行することもあります。

「妊娠と薬情報センター」という厚生労働省が関係している相談窓口もあります。

妊娠・出産については予め主治医および産科医と相談のうえで進めてください。

スポーツをしてもいいですか。

スポーツは、身体を丈夫にして抗てんかん薬の副作用を出にくくしますので、してかまいません。
スポーツは、身体を丈夫にして抗てんかん薬の副作用を出にくくしますので、
してかまいません。

ただし、発作が万が一おきた場合に致命的になるようなスポーツ(スキューバダイビング、ロッククライミング、など)は避けましょう。球技や陸上競技は問題ありません。

美容のための脱毛をしてもいいですか?

光を使う場合、光過敏性のある方は、光が眼に入らないようにして行う必要があります。
光を使う場合、光過敏性のある方は、
光が眼に入らないようにして行う必要があります。

光を使う場合、光過敏性のある方は、光が眼に入らないようにして行う必要があります。前出のQ&A「テレビゲームやアニメはてんかん発作を引きおこすのですか?」に記載がありますように、実際には、成人のてんかんの方で光過敏性がみられることはほとんどないといわれていますので、脱毛は差し支えないと思われます。

社会的支援 

てんかんの患者を支援する社会制度について
教えてください。

医療費支援があります。
医療費支援があります。

すべてのてんかんは「自立支援医療」の対象疾患です。市区町村の福祉課などに申請することにより「指定医療機関」での通院医療費の自己負担分が原則1割となります。「指定医療機関」とは申請をしたときに自分で選んで登録した医療機関で、都道府県などが指定した「指定自立支援医療機関」のことです。

手続きに必要な書類:

申請書(自立支援医療支給認定申請書) ・市区町村窓口にあります。医療機関においてある場合もあります。
医師の診断書 ・記入用紙は市区町村窓口にあります。
・通院している病院・診療所で記載していただきます。
世帯の所得の状況などが確認できる資料 ・ほとんどは市区町村窓口で入手できます。
健康保険証(コピー可)

各市区町村によって必要書類が異なります。福祉課などの担当課で確認することが必要です。また、「小児慢性特定疾病」や「指定難病」が該当することもありますので、こちらも担当課で相談してみましょう。

日常生活支援として「精神障害者保健福祉手帳」などのサービスや手当制度があります。
日常生活支援として「精神障害者保健福祉手帳」などの
サービスや手当制度があります。

てんかんは、法律上、「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」の中で精神障害に位置づけられ、発作が治療によっても抑制されず、生活に支障をきたしている場合は、精神障害者福祉手帳を取得できます。身体障害や知的障害などの合併障害によっては身体障害者手帳、療育手帳が該当することもあります。さらに、重度の障害を有する人に対しては自治体独自の障害者医療費助成制度を設けていることもありますので地域の福祉事務所に相談してみましょう。

手帳の種類や等級によって利用できるサービスは異なりますが、税金の減免、交通費の割引、携帯電話の基本料金の割引などさまざまな支援を受けることができます。

生活費支援としての「障害年金」があります。
生活費支援としての「障害年金」があります。

障害年金は被保険者が初診から1年半を経過してもなお働けないか、働くことに制限を受ける状態になったときに生活の保障として支給されます。初診日に年金に加入している必要があり、20歳になったときの障害の程度によって判断されます。国民年金の加入者には障害基礎年金、厚生年金の加入者には障害厚生年金があります。

年金支給の仕組みは複雑です。手続きに必要な書類をそろえるためにも各窓口で相談しましょう。障害基礎年金は、各市区町村の国民年金担当課、障害厚生年金は、勤務先を所轄する社会保険事務所が窓口です。

てんかんを治療していても仕事ができますか。

条件があるものの就労の機会を見つけていきましょう。
条件があるものの就労の機会を見つけていきましょう。

てんかん発作や合併する症状により、就労が難しい、就労時間を短くしないといけないなどの状況も考えられます。しかし、たとえ月に数回の発作があったとしても、周りの少しの見守りで支障なく生活することができます。そのために職場の理解と協力を得るなどの環境づくりをしながらできる仕事をしていきましょう。

一方で、てんかんをもつ人は、ときに人間関係を作るのが苦手で、長続きしないこともあります。その場合、授産施設や職業訓練校、就労支援センターなどを経て就職などのサポートを受けるのも方法の1つです。

自動車の運転

自動車の運転はできますか。

てんかんをもつ方が自動車を運転する場合(運転免許の取得)には、主治医やそれに準ずる医師(公安委員会が委託する医師)による適正判定が必要です。
てんかんをもつ方が自動車を運転する場合
(運転免許の取得)には、主治医やそれに準ずる医師
(公安委員会が委託する医師)による適正判定が必要です。

自動車の運転はできますか。

てんかんをもつ方が自動車を運転する場合には、主治医やそれに準ずる医師(公安委員会が委託する医師)による適正判定が必要です。適正判定が下りる基準は次のとおりです。

発作が過去5年以内におこったことがなく「今後、発作がおこるおそれがない」と判断される場合

発作が過去2年以内におこったことがなく、「今後X年程度であれば発作がおこるおそれがない」と判断される場合

1年間の経過観察の後、「発作が意識障害及び運動障害を伴わない焦点発作に限られ、今後症状の悪化のおそれがない」と判断される場合

2年間の経過観察の後「発作が睡眠中に限っておこり、今後症状の悪化のおそれがない」と判断される場合

これらの基準を満たさない場合、事故につながる危険性があるため、公安委員会は運転が適正でないと判断します。

自動車の運転は認められた権利の1つですが、大きな自己責任も生じますので、服薬や生活習慣などを守り、医師の判断や指導を得ながら適正な運転を心がけましょう。

服薬について

服薬した後、吐いてしまいました。
どうすればいいでしょうか。

服用30分以内であれば服用しましょう。薬を飲む回数にもよりますので主治医と相談しましょう。
服用30分以内であれば服用しましょう。
薬を飲む回数にもよりますので
主治医と相談しましょう。

服薬について

てんかん治療薬を服用していると、特に小児の場合は嘔吐してしまうことがあります。
服薬後に嘔吐をしてしまったとき、嘔吐量が少なければ再度服薬する必要はありません。
服薬して30分以内に大量に嘔吐してしまった場合には、薬が吸収されていないことが考えられますので、再度服薬しましょう。30分以上経っている場合は、薬剤は吸収されているので、再度服薬せずに様子をみましょう。

てんかんの種類や発作の程度、症状、年齢や薬の1日の投与回数によっても対応は異なりますので予め主治医の先生に嘔吐時の対応を聞いておきましょう。

飲み忘れてしまいました。どうすればよいでしょうか。

飲み忘れたとすぐに気づいたときはすぐ服用します。
飲み忘れたとすぐに気づいたときはすぐ服用します。

飲み忘れに気づいたときは、すぐに服用します。ただし、次の服薬の時間と重なるときは、次を少し遅らせてもよいですが、必ず1日の分量はすべて服用してから眠るようにしましょう。

飲み方は1日の投与回数によって対応が異なります。

  • 1日3回飲む薬の場合
    前回の服薬から4~6時間空いていれば服薬に問題ないと言われていますので、飲み忘れに気づいたら、4~6時間の間隔で服薬しましょう。
  • 1日1回や2回飲む薬の場合
    1日1回や2回飲む薬は、身体に薬が吸収されてから代謝されるまでの時間がゆっくりしているため、体内の薬の濃度が安定していることが予想されます。気づいたときに服薬し、次の服薬時間を延ばして間隔を調整するとよいでしょう。

※ てんかんの種類や発作の症状や程度、年齢により、飲み忘れた際の対処法が異なる場合がありますので、主治医や薬剤師に問い合わせましょう。
※ 何かあったときのために、外出時にも薬を数回分は持ち歩くようにしましょう。飲み方は1日の投与回数によって対応が異なります。

発作がしばらく起きていません。いつ薬をやめることができますか?

発作がしばらく起きていません。いつ薬をやめることができますか?
抗てんかん薬による治療を中止できる時期については、まだよくわかっていません。少なくとも最後の発作後 2 ~ 4 年が経過し、脳波の異常が消えてから 2 年以上経過することが必要とされています。

てんかんの種類によっても症状の経過や治療の効果に差があり、原因が不明の特発性てんかんは比較的治りやすく、原因が明らかな症候性てんかんは治りにくいと言われています。特に小児の特発性てんかんの場合は、きちんと治療を続ければ治る可能性も高いのですが、思春期以降に発症した場合は特発性てんかんであっても、抗てんかん薬の服用を中止すると再発しやすく、薬をのみ続けることが大切です。

てんかんの原因となる疾患(脳の先天的な奇形や、新生児仮死などの周産期障害や頭部外傷、脳炎など)が明らかな症候性てんかんの場合には、抗てんかん薬を中止すると再発する可能性が高くなります。

まずは、主治医に抗てんかん薬の中止が可能かどうか相談してみましょう。中止が可能な場合でも、抗てんかん薬を急にやめると大きな発作が突然再発する可能性があり、主治医の判断が非常に大切だからです。少しずつ減量していく必要があるので、主治医の指示に従いましょう。

風邪などの病気でてんかんの主治医以外の医師にかかる場合、てんかんのことや服用中の抗てんかん薬について伝える必要がありますか?

風邪などの病気でてんかんの主治医以外の医師にかかる場合、てんかんのことや服用中の抗てんかん薬について伝える必要がありますか?
風邪などの病気で他の医師にかかる場合には、てんかんのことや抗てんかん薬の処方内容などを伝えなければなりません。

てんかんと関係のないような症状にみえても、てんかんと関連する場合もあり、抗てんかん薬の副作用の可能性もあるからです。医師が正しく診断するには、患者さんの病歴や服用中の薬の処方内容を把握することは必須です。

医師や薬剤師が薬を処方する時にもこれらの情報が必要です。さまざまな薬の中にはてんかんの患者さんが服用してはいけない薬もあります。また、抗てんかん薬と同時に服用すると抗てんかん薬の効果に影響を及ぼす薬もあります。これらの理由から他の医師にかかる際にはてんかんのことや服用中の抗てんかん薬について正しく伝える必要があるのです。

抗てんかん薬を服用している場合、避けたほうがいい食品やサプリメントはありますか?

抗てんかん薬を服用している場合、避けたほうがいい食品やサプリメントはありますか?
食べるものに関してはあまり気にしなくてもよいと思われます。てんかんの有無にかかわらず、栄養のバランスに気をつけ、規則的な生活をおくることが大切です。

注意点として、アルコールを多量に摂取すると、発作がおきやすくなります。また、夜中に目が覚めるなど睡眠に障害が生じることもあり、アルコールの多量摂取は控えたほうがよいでしょう。また、どの食品もたまに摂取する分には、問題はないと思われますが、偏って多量に摂取する場合は医師に相談することをお勧めします。

抗てんかん薬を服用していても予防接種は受けられますか?

抗てんかん薬によりてんかん発作が抑制されていて最終発作から2〜3ヵ月程度経過している場合にはどの予防接種も問題ありません。
抗てんかん薬によりてんかん発作が抑制されていて最終発作から2〜3ヵ月程度経過している場合にはどの予防接種も問題ありません。

しかし、発作が抑制されていない場合や、発熱など、体調がすぐれない場合には、注意が必要です。その場合の判断は主治医にお尋ねください。

接種後に問題になるのは発熱する頻度が高い麻疹の予防接種と考えられます。しかし、予防接種を受けることでその病気にならない方が患者さんにとってより有益な場合もあります。その場合は、発作予防薬の投与など適切な対策を講じる必要があるため、主治医の先生とよく相談して決めましょう。

抗てんかん薬を服用していても、町の薬局で鎮痛剤、胃腸薬、花粉症の治療薬等を買って飲んでも大丈夫ですか?

医師によるてんかんの治療を受けており、てんかん発作が服薬により抑制されている場合は、町の薬局で販売されている薬剤(OTC薬)との飲み合わせを心配することはないといわれています。
医師によるてんかんの治療を受けており、てんかん発作が服薬により抑制されている場合は、町の薬局で販売されている薬剤(OTC薬)との飲み合わせを心配することはないといわれています。

しかし、てんかん発作が完全に抑制されていない場合は、併用による相互作用に注意する必要があります。また、花粉症の治療薬には発作を助長するものと、そうでないものがありますので、薬剤師または医師に確認してください。

抗てんかん薬との相互作用については、かぜ薬の成分の中にも抗てんかん薬との相互作用を生じるおそれのあるものもあり注意を要します。また、てんかんの既往のある人では、鎮咳去痰薬、鎮うん薬(乗り物酔い)、胃腸薬は慎重に服用する必要があります。

OTC薬といえども服用する前に主治医と相談しましょう。

海外旅行に行きます。時差がある場合の薬の間隔はどうすればよいでしょうか。

飛行機に乗ったときに、時計の針を行き先の時刻にします。そして行き先の時刻に従って服用します。
飛行機に乗ったときに、時計の針を行き先の時刻にします。
そして行き先の時刻に従って服用します。

抗てんかん薬は、紛失に備えて多めに携帯します。すぐに使用できるように、数日分は機内手荷物にも入れてください。飛行機に乗ったときに、行き先の時刻に合わせて服薬するので、前回の服薬時間をずらすなどの事前の調整が必要になることもあります。医師に相談してスケジュールを立てましょう。帰途につくときも、帰りの飛行機に乗ったときに、日本時間に時計を合わせます。そして、日本にいるときと同様の時間に服用します。こちらの服用間隔の調整も旅行に出る前から準備しておきましょう。

てんかんとの区別

小児の熱が高くて、突然がくがくとけいれんし始めました。
てんかんに移行する可能性はありますか?

脳波や神経に異常が認められなければてんかんに移行する心配はほぼありません。
脳波や神経に異常が認められなければてんかんに移行する心配はほぼありません。

てんかん発作は、脳の神経細胞(ニューロン)が、突然過剰に興奮し、筋肉が自分の意思とは関係なくけいれんしたり、さまざまな症状を伴うことをいいます。

一方、熱性けいれんとは、38度以上の発熱を伴って乳幼児がけいれんをおこし、病歴や診察上、中枢神経感染症、代謝異常など、明らかなけいれんの原因がないものを指します(小児てんかんの診断)。繰り返しても基本的にはてんかんにはなりませんが、熱性けいれん重積の場合は注意が必要です。繰り返す熱性けいれんには治療を行いますが、あくまでも熱性けいれんの再発予防であり、これによって将来のてんかん発症を予防できるわけではありません。

スポーツ

てんかんを有する人は、大事を取ってスポーツに参加しないように言われることがしばしばありますが、スポーツはしないほうがいいですか。

スポーツは発作の頻度や重症度に対して良い影響を及ぼすことが多いという研究結果があります。
スポーツは発作の頻度や重症度に対して良い影響を及ぼすことが多いという研究結果があります。

しかし、てんかんを有する人にスポーツを勧める場合、スポーツの種類はもとより、発作のおこる可能性やタイミング、発作の種類や程度、ある程度のリスクを負う姿勢がご本人にあるか否かを考慮しなければなりません。

臨床研究では、スポーツは脳波のてんかん様放電を抑制し、スポーツをしている最中に発作がおきる可能性は低くなると報告されています。こうした効果は子どもに特に顕著で、てんかんを有する子どもたちには学校でスポーツを勧めるべきです。スポーツに伴うリスクは、医師、本人とその親とで共有する必要があります。

スポーツは、発作がおきた場合にてんかんを有する本人がけがをするリスクや命にかかわるリスク、および周囲にいる人にリスクが及ぶ場合によって3グループに区分されるといわれています。

①大きなリスクがないスポーツとして、陸上競技、武術(柔道、レスリングなど)、球技(野球、バスケットボール、テニスなど)があります。②てんかんを有する本人には中等度のリスクがあり、周囲の人にはリスクが及ばないスポーツとして、アルペンスキー、サイクリング、スケートなど。③てんかんを有する本人には高リスクがあり、周囲の人にもリスクが及ぶスポーツとして、スキージャンプ、サーフィン、スキューバダイビングなどが挙げられます1)

①のスポーツは、ほとんどのてんかんを有する人が参加できると考えられます。②については、運動中に監視するなどの条件のもとに神経科医が可能と判断した場合に参加でき、③については発作がおこる可能性のある場合は通常不可とされます1)

1)Capovilla G, et al. Epilepsia. 2016 Jan; 57(1):6-12.

女性とてんかん

性生活が発作を誘発することはありますか

一般的に性行為がてんかん発作を誘発することはないと考えられています。
一般的に性行為がてんかん発作を誘発することはないと考えられています。

てんかんのない人と同じです。ただし性行動は心理的な影響を強く受けることが知られています。てんかん患者であるという気持ち、性行動が発作を誘発するのではないかという不安が性的機能を減弱させることは考えられると言われています2)

2)Nami_8(12)_323 てんかん医療と性 福島裕

経口避妊薬は服用できますか

抗てんかん薬と一緒に飲むと経口避妊薬の効果が弱くなることがあります。
抗てんかん薬と一緒に飲むと経口避妊薬の効果が弱くなることがあります。

一部の抗てんかん薬は経口避妊薬の血液中の濃度を下げ、避妊効果を弱くすることがあるので注意が必要です。避妊を確実にするためには他の避妊方法も併用したほうがよいでしょう。

出産は無痛分娩にしたほうがいいですか

無痛分娩を選択する必要はありません。
無痛分娩を選択する必要はありません。

出産に関するリスクはてんかんのない女性と同じです。

抗てんかん薬を内服している場合、授乳に制限はありますか

一部の抗てんかん薬は母乳へ移行することがあり授乳時には慎重にならなければなりません。そのほかの抗てんかん薬については授乳可能です。
一部の抗てんかん薬は母乳へ移行することがあり授乳時には慎重にならなければなりません。そのほかの抗てんかん薬については授乳可能です。

一部の抗てんかん薬では乳児の注意深い観察を必要としますが、そのほかの抗てんかん薬は授乳可能です。母乳栄養の利点を認識してもらい、授乳婦が必要薬物服用を拒否・中止したり、授乳を中止したりすることがないように正確な情報の伝達が必要とされています。抗てんかん薬内服中の画一的な授乳禁止は、児の成長発育、母児相互作用において不利益を招くおそれがあります。

慎重な内服が求められる一部の抗てんかん薬に関する正確な情報を医師から得て、適切な授乳指導を受けることを勧めます3)

3)抗てんかん薬内服中の授乳指導に関するお願い 日本てんかん学会理事長池田昭夫(2018年11月30日)

就職とてんかん

就職試験の面接でてんかんがあると言う必要はありますか
てんかんに移行する可能性はありますか?

必ず言わなければならないわけではありません。
必ず言わなければならないわけではありません。

米国では、連邦法である「障害のあるアメリカ人法(ADA)」が障害者に対する差別を禁止しています。米国雇用機会均等委員会は、「職場におけるてんかんと障害のあるアメリカ人法に関するQ & A」を作成してADAがてんかんのある求職応募者と従業員にどのように適用されるのかを説明しています。これによるとてんかんを有する人のプライバシーは保護されていることがわかります4)

しかし、日本にはこのような取り決めはありません。必ずしも告知の必要はありませんが、理想を言えば、事前にてんかんがあることを告げておいた方が、万が一発作をおこした場合に職場の理解が得やすくなります。てんかんの症状に対する誤解や偏見は根強いものがあります。告知する場合は、自分のてんかんのタイプを伝え、どのようなサポートが必要か具体的に伝えることで、てんかんに対する誤解や偏見を軽減することができると思われます。

4) 米国雇用機会均等委員会 職場におけるてんかんと障害のあるアメリカ人法に関するQ&A
  職場におけるてんかんと障害のあるアメリカ人法に関するQ&A

知っとく情報

てんかんは、「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」によって、法律上、精神障害に位置づけられていますが、その症状は患者さんによってさまざまです。てんかんに対する正しい知識が十分に普及しているとはいえず、てんかんを有しているという理由で脱毛等の施術を断られたという報告もあります。このような対応を受けることがないように、平成28年1月、「障害者差別解消法 ― 医療関係事業者向けガイドライン」が制定されました。この医療関係事業者向けガイドラインでは、てんかんを有する人々に対して必要な配慮が行われるように、てんかんの「主な特性」および「主な対応」が記載されています。

監修:渡辺 雅子 先生(新宿神経クリニック院長)

更新日:2018年10月01日

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