うつ病の治療法

うつ病の治療は、回復までに数ヵ月かかることが通例です。治療開始期は十分な休養が大切で、状況によっては休職することも選択肢の一つに入れながら、とにかくうつ病の治療を生活の中心に据えてじっくり取り組みましょう。「仕事はどうしたらよいだろう?」「会社にどう思われるだろうか?」などと心配になることもあると思いますが、その点も率直に主治医に相談しましょう。体の病気にかかった場合と同じように、(うつ病という)病気をしっかり治す、という気持ちで治療に取り組むことが大切です。

薬物療法

うつ病の治療では、患者さんの症状に合わせた薬(向精神薬(こうせいしんやく)と呼びます)が用いられます。向精神薬には、抗うつ薬、抗不安薬(いわゆる精神安定剤)、抗精神病薬(強力精神安定剤)、抗てんかん薬(抗けいれん薬)、気分安定薬、睡眠薬などがあります。

うつ病の治療は抗うつ薬が中心ですが、患者さんの症状に応じて抗不安薬、抗精神病薬、睡眠薬なども処方されることがあります。

抗うつ薬にはさまざまな種類があり、患者さんの症状や背景を踏まえて最適と思われるものを医師が検討します。詳細は、後述の「抗うつ薬の種類」をお読みください。

精神療法

精神療法は、薬物療法とともにうつ病に有効な治療法で、医師や臨床心理士などが患者さんと会話を重ねることで、患者さんの悩みや心配を軽減します。支持的精神療法、認知行動療法、対人関係療法などがあります。

  • 支持的精神療法

患者さんの悩みや不安などを聞き、理解し、共感することで、気持ちを楽にする治療法です。

  • 認知行動療法

認知とは、「ものの考え方」や「受け取り方」のことです。うつ病の患者さんは、ものの見方(認知)が現実よりもマイナスにかたよった見方になっていることが多いものです(“認知のゆがみ”と呼ばれます)。その認知に働きかけ、ストレスを軽減する治療法です。また、さまざまな場面でどのように行動すればよいかを一緒に考え、患者さんが場面ごとに適応した行動を身につけられるような援助もしていきます。

  • 対人関係療法

対人関係を重視した治療法で、患者さんが抱えている人間関係の問題に焦点をあて、話し合いなどを通して患者さん自身がその問題点に気づき、解決できるよう支援します。

十分な休養をとる

うつ病と診断されたら、仕事や学校、家事から一定の距離をおいて、休養をとることが治療の第一歩です。睡眠を十分にとり、生活の中で優先順位の低いことは手を付けることを控えたり、問題がある場合は取り組まずに先送りするか他の人にお願いしてゆったりと過ごせる環境を作りましょう。

信頼できる主治医をもつ

うつ病の回復は早くても数ヵ月を要するため、気長な治療が必要となります。医師との緊密な信頼関係が重要です。一度の診察で気が合わない、相性が良くないと決めつけず、じっくりと主治医と話しながら少しずつ信頼関係を構築していきましょう。

「脳」と「環境」の悪循環を遮断していくのもひとつの治療方針となります

「脳」と「環境」の悪循環の遮断

「日本うつ病学会治療ガイドライン:大うつ病性障害」より引用改変

監修:中村 純 先生

(産業医科大学名誉教授)

更新日:2021年5月10日